【貫井徳郎】慟哭
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連続少女誘拐事件を捜査することになったエリート捜査一課長、しかし捜査は中々進展せず、次第に警察内の不協和音、マスコミとの軋轢を生んでいく。緊迫の状況が続く中、事態は急展開をむかえる。
捜査一課長・佐伯、現場の刑事・丘本、謎の男・"松本"、3人の視点から描かれる。視点が変わりながら話が進むので、少し読みづらさはあるかもしれない。しかしこういう書き方にしなければならない訳がある。
今回は上手く作者にやられた感がある。何かがおかしいという違和感をもちつつ、その何かがわからないままラストまでいってしまった。だから最後、種明かしのところで驚きというよりなるほど感が大きかった。ずっと感じてた作品に対する違和感がはっきりした。
違和感の正体がわかりすっきりするかというとそういうものでもない。むしろ余計に虚しさを感じてしまう。『慟哭』とうタイトル、まさにこの作品を一言で表したものだと思う。
事件の捜査、警察内の対立、マスコミとの軋轢、怪しげな新興宗教の暗部といった要素を盛り込みながら、作品の本質的には人間の内面にあるものを強く映し出している。特にその弱さや脆さ、孤独感といったものが鋭く抉り取られている。そのため作品全体を暗さとか重苦しさが覆っている。
ミステリーとしては異質、かなり面白いと感じた。内容が内容なので気持ちよく読めるというもではなかったが、特に心理描写の部分で惹きつけるものを感じた。
好き嫌いははっきり別れるだろうなと思う。少なくとも万人受けするタイプの作品じゃないだろう。私は天邪鬼なところがあるのでそこにも魅力を感じた。
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